在宅医療フロンティア プロジェクト2040

── 質の高い人生の結び方があたりまえの日本に変えていく社会インフラ創造プロジェクト ──

04.在宅医療発展のために私たちが取り組んできたこと

(4)へき地診療所再生

1. 閉鎖の危機から始まった再生への挑戦

2012年、愛媛県南部の人口わずか1300名の町で、公立診療所が閉鎖の危機に瀕していました。年間3000万円もの赤字を計上し、市町村合併の余波で整理対象となったのです。ある日住民の代表が訪ねて来られ「先生、遂に診療所がなくなることになった。なんとか助けてもらえんやろか。」と、かつてこの診療所の所長だった永井に救いを求められたのでした。しかし、この診療所、松山から100キロ近くも離れ、毎年莫大な赤字を計上し、さらに人口も減り続けている...、1民間の小さな組織に何かできる訳でもありません。

しかし、永井にとっては(そして私たちにとっても)、「自身の原点である」という強い想いから、無謀にもそれを引き受け、民間による再生プロジェクトを始動させることになったのです 。

2. 医療を止めない革新的な運営システム

再生にあたり、これまでの「1人の医師がへき地に常駐する」という常識を覆す、新しい仕組みを導入しました。行政の理解もあり、松山市のたんぽぽクリニックの複数の医師が日ごとに現地に出向き勤務する体制を構築しました。医師は生活基盤を都市部に置きながら無理なく交代勤務ができ、教育や生活に不安を覚えることはありませんでした 。
また、医師は現地に宿泊し、夜間や休日も往診を受けられる体制を取り、24時間・365日の安心を在宅患者にもたらしています。
また毎朝、松山の本院とへき地診療所をウェブ会議で繋ぎ、電子カルテやクラウドツールを活用して多職種で即時に情報を共有しています 。

3. 経営の「V字回復」を実現した3つの施策

わずか数年で赤字を解消し、黒字化を達成した要因は、医療サービスの最適化にあります。


・外来と在宅の切り分け ── 午前中に外来診療を集約し、午後は訪問診療(在宅医療)に充てることで、新たな診療報酬を確保しました 。特に在宅医療の早期定着に注力し赤字の圧縮に努めました。

・院外処方の導入──薬局を誘致し院外処方とすることで、薬剤在庫のリスクをなくし、併せてそれに掛かる人件費の圧縮も図りました 。

・患者の回帰 ──「住み慣れた地域で最期まで過ごせる」という安心感が広がり、町外へ流出していた患者が戻ってきました 。

4. 医療を超えた地域共生と未来への寄与

診療所の役割は治療だけではありません。地域の一員として、夏祭りの主催や住民勉強会・健康教室などを継続的に実施し、信頼関係を深めています。また、同地域への介護施設の開設と併せ30名以上の雇用を創出し、若者の定着にも貢献しています。

...このモデルは、人口減少と医療の空洞化に悩む全国の過疎地域における一つの解決策となり得るのではないでしょうか。私たちはこれからも、誰もが住み慣れた家で人生の幕を下ろせる「最期まで安心して暮らし続けられる町」の持続を支えていきたいと考えています。