たんぽぽコラム

在宅医療の制度の知識

著者:永井康徳

  

第8回 たんぽぽ先生が選ぶ 在宅医療インパクトランキングトップ10【第2位】

2026年2月13日に、2026年度診療報酬改定の個別改定項目が厚労省から発表されました。
前回に引き続き、私たち在宅医療に関わるすべての方にとって重要なポイントを、わかりやすくお伝えしていきます。今回は第2位の発表です。


第2位 「在総管・施設総管 月2回訪問に重症度割合要件の新設」

この改定に一驚した方、多いのではないでしょうか。特に施設在宅を中心に行っている先生方には、まさに激震の改定です。軽度患者を主体に診ている医療機関への適正化と言ってもいいかもしれません。

何が変わったのか
在宅時医学総合管理料、いわゆる「在総管」と、施設入居時等医学総合管理料、いわゆる「施設総管」。この2つに「注16」という新しい規定が加わりました。
「月2回以上訪問診療を行っている患者さんのうち、別表第8の2・別表第8の3に該当する、つまり重症の患者さんの割合が一定以上でなければ、月2回の区分で算定できない」ということです。
基準を満たさないとどうなるかというと、月2回訪問しているのに、点数は月1回の区分に引き下げられてしまいます。
つまり、「訪問はしている。でも点数は低い方で」ということになるわけです。これは相当厳しい改定です。

ホームページなどで、「訪問診療は月2回」と書いてある在宅の医療機関が多く、当たり前のように月2回以上訪問していましたが、本当に月2回の訪問が必要な患者と月1回で十分な患者を医学的に再評価し、適切な訪問頻度に見直す必要が出てきました。軽度の患者を主体に診ていたクリニックには大打撃です。反対に真に重症度の高い患者を中心に月2回以上訪問している在支診には影響が限定的です。

具体的にどれくらいの影響があるのか
では、具体的な数字を見てみましょう。機能強化型の在支診・病床ありの場合で見てみます。
単一建物1人の場合、月2回で4,485点のところが、月1回の区分だと2,745点。差額はマイナス1,740点です。
ただ、影響が最も大きいのは実は施設系なのです。
例えば50人以上の建物。月2回で905点だったものが、月1回だと575点。1人あたりマイナス330点。「たった330点か」と思うかもしれません。
しかし、これが50人いたらどうでしょうか?月額マイナス16,500点。つまり16万5千円の減収です。
しかもこれは、1施設の話です。複数施設を訪問していたら、その倍、3倍になるわけです。年間にすると数百万円単位の影響が出てくる可能性があります。

なぜこれが第2位なのか
理由は3つあります。

1.「個人」ではなく「医療機関全体」に効く仕組みだから
普通の算定要件は、個々の患者さんごとに「この人は該当する・しない」と判断します。しかし今回の重症度割合は、いわば「施設基準レベル」の要件です。
医療機関全体で月2回以上訪問している患者さんの中で、重症の方がどのくらいの割合いるか。これが基準を下回ると、全員が月1回の区分に引き下げになります。
重症でない患者さんだけが影響を受けるんじゃない。全患者が影響を受ける。ここが怖いところです。

2.施設在宅の「一律月2回」モデルへの明確なメッセージだから
正直に言えば、これまで施設の患者さんに対して、医学的な必要性をそこまで厳密に考えず「とりあえず月2回」で訪問していたケースは少なくなかったと思います。
今回の改定は、厚労省からの明確なメッセージです。
「月2回訪問するなら、それに見合った重症度の患者を診ていますか?」と。
在宅医療の質そのものを問う改定だと私は受け止めています。

3.対応に時間がかかるから
この要件は、1人2人の患者さんを入れ替えれば済む話ではありません。医療機関全体の患者構成を見直す必要があります。場合によっては訪問頻度の再設計、つまり月2回を月1回に切り替える判断も必要になります。
準備に時間がかかるからこそ、今この段階で知っておいてほしいのです。

救済措置について
ただ、救済措置もあります。
「月2回以上訪問する患者数が一定数未満」の場合は、この基準を満たさなくてもよいとされています。つまり、小規模な施設や少人数を診ている場合への配慮です。
具体的な数値は告示で示されますので、しっかり確認してください。

実務的に何をすべきか
では、私たちは実務的に何をすればいいのか。4つのステップでお話しします。

ステップ1:具体的な数値の確認
告示で示される「一定割合」「一定数未満」の具体的な数値。これがすべての出発点です。まずはここを押さえてください。

ステップ2:患者リストの作成と該当状況の把握
月2回以上訪問しているすべての患者さんのリストを作って、別表第8の2・第8の3に該当するかどうかを一人ひとり確認してください。現在の重症度割合を「見える化」することが大事です。

ステップ3:訪問頻度の医学的再評価
本当に月2回の訪問が医学的に必要な患者さんと、実は月1回で十分な患者さん。ここを改めて見直してみてください。
これは減収を避けるためだけじゃありません。患者さんにとって本当に必要な医療を提供するという、在宅医療の原点に立ち返ることでもあります。

ステップ4:チーム全体での情報共有
医師だけの問題ではありません。看護師、事務スタッフ、ケアマネジャー。関わるチーム全体でこの改定の意味を共有し、対応を進めてください。

たんぽぽクリニックへの影響
ちなみに、私たちたんぽぽクリニックはどうか。
私たちはもともと、真に重症度の高い患者さんを中心に月2回以上の訪問を行っています。ですから、この改定の影響は限定的だと考えています。
ただ、これは決して他人事ではありません。在宅医療全体がこの方向に進んでいくことを意味しています。

今回の改定は、単なる点数の変更ではありません。
「在宅医療の質を問う」改定です。
月2回訪問するなら、それに見合った重症度の患者さんを診ているか。形だけの訪問ではなく、本当に必要な医療を届けているか。
厳しい改定ですが、在宅医療の本質を見つめ直すきっかけにもなります。
皆さん、一緒に乗り越えていきましょう。

関連動画 たんぽぽ先生が選ぶ 在宅医療インパクトランキングトップ10【第2位】