たんぽぽコラム

在宅クリニック運営のノウハウ

著者:永井康徳

  

第25回 往診しましょうか?

24時間対応は、現在では在宅医療で必須のサービスの一つとなっています。最近では、夜間や休日の往診だけ引き受ける業者も普及しつつあります。
しかし、夜間休日対応は、在宅医療において職員同士の関係悪化につながりやすい業務の1つでもあると思います。当院では、医師と看護師が夜間休日当番をコンビを組んで対応します。お互いの意識の違いで問題になることもあるのです。職員間で対応方法の認識に相違があった場合、すぐにすり合わせれば簡単に解決することが多いですが、放置すると大きなトラブルに発展しかねません。そこで当法人では、休日夜間対応の認識の違いで職員間の関係が悪化しないよう、ルールを設けています。

当法人では、当番看護師が患者からのファーストコールに対応する体制を整えています。話を受けた看護師が「医師の見解や対応が必要だ」と判断した場合、看護師から当番の医師に連絡しています。ただし、こうした体制では、看護師が医師に往診を依頼しても、医師が「必要ない」と判断し、看護師が患者と医師の板挟みになり不満を抱えてしまうことがたびたびありました。
そこで、当法人では2つのルールを設けています。

(1) 患者から休日夜間に病状変化の連絡があった際は、医療者側から患者に往診を打診する。
(2) 看護師から往診の依頼が寄せられたら、医師は必ず対応する。(図1)

往診依頼のハードルを下げる
(1) のルールを設けた背景には、患者やその家族への配慮があります。患者や家族は「こんな時間に連絡したら迷惑をかける」と遠慮しながら、それでも不安・心配なことがあり電話を掛けています。電話連絡にすら気を遣っているのだから、往診の依頼となればさらにハードルは高くなるでしょう。
そこで、当番看護師には原則、患者の話を一通り聞いた後に私たちの対応の最上級のサービスである「往診」を打診するよう徹底しています。「医師が往診しましょうか?」と聞くのです。患者や家族が必要と判断すれば「お願いします」と即座に依頼するだろうし、切迫した状況でなければ「往診の必要はない」と答えるはずです。このルールがあれば、患者・家族も往診を依頼しやすくなり、看護師も往診の要否を判断するプレッシャーから解放されると思います。24時間対応には電話対応、訪問看護師による訪問、医師が赴く往診の3段階があります。その最上級の対応となる「往診」をあえて医療者から提案することが大事だ考えています。

疑義が生じた往診は翌朝に検討
当番を担う医師には、(2) の「看護師からの往診の依頼には必ず対応する」ルールを設けています。これら2つの対応方針をルール化することで、往診を依頼する恵者・家族の心情に寄り添えるほか、たとえ「往診の必要はない」と医師が感じても断れなくなります。そのため、ファーストコールを受ける看護師も、患者と医師との板挟みになり悩むことはなくなると思います。
その上で、「本当に往診対応が必要だったのか」と医療者が疑問に感じた事例については翌朝のミーティングで状況を共有し、他の医師や看護師を交えて話し合い、今後に生かしています。日中に複数人で話し合えば相互理解が進み、解決もしやすくなるからです。

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