たんぽぽコラム

在宅クリニック運営のノウハウ

著者:永井康徳

  

第18回 在宅医療専門クリニック開業成功のための5ヶ条②

前回に引き続き、クリニック運営ができていない人たちに共通した5つの問題点とその解決策を「在宅医療専門クリニック開業成功のための5箇条」として紹介したいと思います。今回は、第2箇条です。

問題点 2  患者は何もしなくても自然に集まってくると思っている
当院には、毎日のように新規患者が紹介されてきます。そのため、当院で働いていた医師たちの多くは、「患者は何もしなくても紹介されてくるもの」という間違った認識を持ってしまうようです。そして、開業して初めて「なぜ、うちには患者が紹介されないのか?たんぽぽクリニックとは何が違うのか?」と気づくようです。当院に毎日のように患者が紹介されるには、それだけの理由と努力があるのです。

在宅医療専門クリニックは、当たり前のことですが、どこからか紹介されないと患者は来ません。何の実績もない新規のクリニックなら、なおさらです。
だからこそ、「自分たちがどのようなクリニックで、どのようなことができるか」を周りに認知してもらわなければ、紹介にはつながりません。私自身、開業当時から現在でも、自ら連携先に出向いて認知活動を行っています。
今でこそ訪問すると歓迎してもらえますが、開業当初は「そこまでして患者が欲しいのか?」と言わんばかりの冷たい対応をされたものです。
紹介された1人の患者を丁寧に診て、患者にも家族にも満足してもらい、そのことを紹介元にフィードバックできれば次の紹介につながることは言わずもがなですが、それだけでは経営が維持できるほどの紹介にはつながりません。「患者紹介」は、在宅クリニックの生命線です。「患者は黙っていても紹介されてくるものではない」ことをしっかりと意識して、院長自らが率先して認知活動を行ってほしいものです。

当院の2022年度の紹介患者データを図1に示します。在宅患者の紹介患者数は473人で、医療機関から 37%、ケアマネジャーから 26%、本人・家族から 16%、施設から 15%でした。ケアマネジャーや施設からの紹介は軽度・中等度患者、医療機関からは重度患者が多く、本人・ 家族からは軽度から重度患者まで程度は様々です。
実際のところ、患者紹介のルートとアプローチ方法が確立すると、紹介される患者の数や、重症度のコントロールも可能になります。自院の現在のマンパワーや、どのような疾病・状態の在宅患者を紹介してほしいのかを見きわめた上で、紹介元にアプローチできるようになるからです。認知活動を戦略的・継続的に行っていけば、このような調整も可能になるのです。


〈当院が行っている認知活動〉
定期的に認知活動ミーティングを行っています。
1) 戦略の策定
月別の紹介患者数、紹介元の分析をもとに、短期(1カ月)・ 中期(2カ月 ~半年 )・長期(半年~1年)の認知活動の戦略を練る。
2) 営業活動の充実
営業会議を月1回開催し、営業担当(事務職員が兼務)は連携先(居宅支援事業所、訪問看護ステーション、施設等)を定期的に訪問する。
3) 地域との連携
地域の医療・介護従事者を対象とした勉強会を定期開催し、お互いに知識やスキルの向上を図るとともに、関係構築をめざす。
4) 住民への周知活動
市民公開講座を定期開催し、一般市民への認知度アップと在宅医療の普及を図る。
5) 自院サイトの充実
Webサイトは患者や家族がクリニックを選ぶ際の指標の1つになるため、自院の強みや雰囲気を伝えられるように最新の情報に更新しておく。
6) SNS を利用した情報発信
患者への取り組みや勉強会、市民公開講座の開催告知や開催後の報告などをこまめに発信する。

第2箇条
営業活動(認知活動)は戦略的かつ計画的、継続的に行って、患者紹介につなげよう。

関連動画 在宅医療専門クリニック開業成功のための5ヶ条②