著者:永井康徳
在宅医療の利用者を増やすには、三つのポイントがあると考えます。
一つ目は、認知活動(営業)です。外来医療では、患者が自らクリニックを選んで来院しますが、在宅医療の場合は病院や訪問看護ステーション、ケアマネジャーなどから紹介されて受診するケースが多いと思います。もし自身が紹介元だとして、開業したばかりで実績がなく、特徴も分からないクリニックに患者を紹介するでしょうか。恐らくしないでしょう。まずは紹介元に知ってもらうため、積極的に認知活動(営業)にでることが大切だと思います。この認知活動を行うかどうかで患者の伸びは明らかに変わると思います。
2000年にたんぽぽクリニックを開業した時は、私自身が病院や訪問看護ステーション、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所などに挨拶して回りました。今でも紹介件数が減ってきたなと感じたら、職員と共に営業に出かけています。訪問先では、受け入れ可能な患者像や得意分野、自院の理念、自身の在宅医療にかける情熱などを伝えています。その際、自院の特徴や連絡先などを記したチラシやパンフレットがあると良いと思います。
診療所のウェブサイトも活用しましょう。診療時間や連絡先などの基本情報だけでなく、院長やスタッフの人となりが伝わるようなコンテンツや写真、似顔絵などを載せておくと、親しみを持ってもらいやすいと思います。
二つ目のポイントは、紹介された患者を丁寧に診療し、患者の様子や経過を紹介元にしっかりフィードバックすることです。病院の先生や看護師も在宅医療で患者がどういう経過をたどるのかイメージが湧けば、在宅医療の適応となりそうな患者をさらに紹介してくれると思います。
三つ目のポイントは、在宅医療のニーズを引き出すことです。筆者は「地域の専門職が在宅医療の知識やスキルを高めれば、その地域の在宅医療のレベルが上がる」と考えています。問題は、在宅医療のニーズがないといわれる地域では、在宅医療が可能であることやその良さを地域の専門職や地域住民が認識していないことだと思うのです。どのような患者が在宅医療の適応となるのか、在宅医療でできること、入院医療との違い、費用はいくらぐらいになるのかといった情報をコツコツ発信していきましょう。
情報発信の方法も、ソーシャルメディアの利用、ニューズレターの発行、地域の専門職や地域住民向けの勉強会の開催、講演会など手段はたくさんあります。まずはできることから始めてみてはどうでしょうか。
このような活動を続けていると、自院の理念を理解し、共感してくれる事業者とのつながりができてきます。そのネットワークを広げていけば、患者の紹介もおのずと増えると思います。「在宅医療の質を高める」という志を持ち、地域のニーズを引き出していってほしいと思います。