たんぽぽコラム

フリートーク

著者:永井康徳

  

第18回 DoingとBeing ─二つの医療の形と「寄り添う」ことの意味


医療の現場には、大きく分けて二つのアプローチが存在します。それは「治し施す医療」と「支え寄り添う医療」――"Doing"と"Being"の医療です。

"Doing"の医療は、救命救急の現場に代表される積極的な治療行為です。患者の命を救うため、迅速な判断と処置を行い、時間との勝負に挑みます。患者の価値観を確認する余裕はなく、時として冷徹な観察者としての立場が求められます。生命を救うという明確な目標に向かい、医療技術を駆使する世界です。

一方、"Being"の医療は、在宅医療に象徴される患者に寄り添う医療です。治せない病気や障がい、老衰に直面した人々を支えることが目的となります。完治は望めなくても、身体を楽にし、患者さんがやりたいことを見つけ、毎日に張りを持てるよう支援する――私たちは患者さんの人生の伴走者として、家族のような存在でありたいと願っています。

では、この「寄り添う」とは何を意味するのでしょうか。それは単に優しく接することや、患者さんの要望をすべて受け入れることではありません。真の寄り添いとは、相手の人生観や価値観を尊重しながら、専門職としての視点も持ち続け、その両方のバランスを取りながら関わり続けることです。

そのために必要なのは、まず「聴く」姿勢です。患者さんの言葉だけでなく、表情や沈黙、生活環境にも耳を傾けます。そしてチームで情報を共有し、多職種それぞれの視点を持ち寄りながら、「この患者さんにとって何が大切か」を考え続けます。

多死社会を迎える日本では、"Being"の医療がますます重要になります。かつて「患者が亡くなってもご家族の前で泣いてはいけない」と教えられましたが、今は「悲しいなら泣いてもいい」と伝えたいのです。医療者である前に一人の人間として、患者さんの死を悼み涙を流すことは自然なことです。これからも私たちは、"Being"の医療を大切にしていきます。

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