たんぽぽコラム

フリートーク

著者:永井康徳

  

第16回 多死社会、人生の最期を考えて


日本は世界有数の長寿国として知られていますが、その一方で「多死社会」という新たな課題に直面しています。戦後のベビーブーム世代が高齢期を迎え、年間死亡者数は急激に増加の一途をたどっています。これは単なる統計上の変化ではなく、私たちの生き方そのものに深い問いを投げかけています。

かつて人は自宅で最期を迎えるのが当たり前でした。家族に看取られ、慣れ親しんだ環境で人生を閉じることができました。しかし医療の発達とともに病院での死が一般的となり、約8割の人が医療機関で最期を迎えるようになりました。確かに医療技術の進歩により延命は可能になりましたが、果たしてそれが本当に望ましい死に方なのでしょうか。

近年、終末期医療や在宅医療への関心が高まっています。自分らしい最期を迎えたいと願う人々が増え、ホスピスや緩和ケアの重要性も認識されつつあります。しかし現実には、家族の負担や医療体制の問題など、様々な壁が立ちはだかっています。理想と現実のギャップは依然として大きいのが現状です。

多死社会を迎えた今、私たちに求められるのは死を忌避することではなく、どう生きるかと同時にどう死ぬかを真剣に考えることでしょう。それは決して暗い話題ではありません。限りある命だからこそ、一日一日を大切に生きる意味を見出すことができるのではないでしょうか。

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