たんぽぽコラム

フリートーク

著者:永井康徳

  

第6回 永井の法則


本日は「永井の法則」というお話をしたいと思います。
「永井の法則」ってなんだと思いますよね。
当院では食支援(食べる取り組み)を一生懸命しています。誤嚥性肺炎で絶食となり、点滴して、吸引して、場合によっては拘束されて、病院で療養されている人が、食支援目的で入院されてきます。その多くは点滴や人工栄養が悪さをして食べる意欲がなくなっている人が多いのです。その場合に、人工栄養を減量または中止すると、食べる意欲が出て、食べられる人は食べられます。食べられない人はしっかりと死に向き合って、食べられるだけ食べて、食べられない場合は最期を迎えるというような選択になっていきます。

がんの末期の人は医師がその病状を判断して、予後(どれくらい持つか)を判断していきますが、半年持たない状態を「末期の状態」と言います。非がんの人で持続して食べられなくなった人は、やはりもう半年生きるのは難しいと思いますので、非がんの人の末期と言ってよい状態だと考えています。
食べられなくなったから点滴をするというのは、医療者の考えなんですが、食べられないから点滴して、その間に治療をしてよくなってまた食べられるようになるんだったら、それはそれでもちろんいいことだと思います。
しかし、食べられないから点滴をして、そのまま点滴や人工栄養をずっと続け、吸引して、絶食で拘束されて亡くなっていくとしたら、それは本人が望んでいる状態なのかと思うんですね。
そういう時に、人工栄養を一回中止するなり減量すると、食べる意欲が出て、食べられる人をたくさん見てきました。人工栄養をすると、ちょっとの点滴でも高齢者は食べる意欲がなくなってしまいます。そして、人工栄養や点滴をやめた時に、「何々が食べたい」と大きな声で言える人は、たいてい食べられると思うんです。声を出す筋肉と食べる筋肉とは同じですからね。大きく声を出せる人は、飲み込むことも可能な人が多いと思います。そして、食べたいものがあって食欲がある、食欲があって飲み込めたら、たいていの人は食べられます。それが「永井の法則」です。大きな声で食べたいものを言える人は食べられるとわかれば、食べる取り組みもしっかりできると思うので、難しい検査をしなくてもわかると思います。家族も簡単に判断ができると思います。

人工栄養をしている場合は、それだけで食欲がなくなってしまうことが多いので、いったん止めてみるといいと思います。点滴したら唾液とか痰が出て、吸引しないといけない状態では、食べる意欲も湧かないし、飲み込むこともなかなか難しいと思うのです。人それぞれ最善は違うんですけど、自分自身もそうですが、私の患者さんも皆、最後まで食べたいものを少しずつ、食べたいだけ食べて、亡くなりたいと思っている方が多いように感じます。ぜひ「永井の法則」をご活用ください。

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