たんぽぽコラム

フリートーク

著者:永井康徳

  

第4回 TTC


上記の表は私たちの法人において、朝の全体ミーティング、多職種でのミーティングで使用している表です。
「看取りの段階の表」と言っていますが、看取りの段階を「日単位、週単位、月単位」と常にカテゴリー分けしていきます。もちろん週単位から日単位とか、週単位から月単位とか、いわゆる予後(どれくらい持つか)が変わっていくケースも当然ありますし、変わるたびに変更していきます。
でも甘めにつけるのではなくて、ちょっと厳しめにつけます。1ヶ月持つかもしれないなと思っても、1ヶ月持たないかもしれないなと思うと、週単位にします。1週間持たないなと思ったら日単位にします。そんなふうに限られた時間を意識していくんですね。もちろん、急に亡くなる人も一定の割合でいらっしゃいますが、限られた時間をみんなで意識しながらみていきます。例えば、週単位で1ヶ月持ちませんよという人が、週に1回の訪問でいいのかと思うわけです。

もう日単位で1週間持たない人が、週1回の訪問で安心できるんでしょうか?週2回の訪問でも安心できないと思うんですよね。どれくらい訪問するかというのも、もちろん人によっても違いますし、患者さんやご家族に安心してもらうために、どれくらい訪問すればいいのかということも考えないといけないと思います。私がいつも言っているのは、週1回訪問してその間で亡くなったときに、患者さんやご家族は、よくみてくれたと思ってもらえるだろうかということを、いつも職員に問いかけています。訪問頻度も意識しながら、限られた時間を、どれくらい訪問して、どんなことをして、どんな説明をして、安心してもらうかということを、常に考えるようにしています。

さて、TTCですね。このTTCはこんなふうに使います。「○○さん、TTCが発動されました」とミーティングのときにこう言います。このTTCって何の用語かわかりますか?「とことんケア」という意味です。なんだ、とみんな思いますよね。 このTTC、実はですね、群馬県にある緩和ケア診療所・いっぽの小笠原先生の講演会で私が座長をさせてもらった際に、小笠原先生がこのTTCを使っているというのを聞いて、使わせてもらっていいですかって、使うようになったんです。うちに見学に来た先生たちもこのTTCを聞いて、うちでも使いたいと言って使っている先生もたくさんいます。このTTCが発動されたら、診療報酬上、訪問診療と訪問看護が同じ日に入れないとか、点数を取れなかったりする場合も結構あるんですけど、点数を取れなくてもいいので必要があれば何回でも入ってくださいというサインです。私に許可をもらわなくてもいいですよ、限られた時間にどれだけ訪問すれば安心できるか、そしてどれだけ患者さんやご家族のやりたいこと、食べたいものを食べる、そういう支援ができるかということを考えるようにしましょう、どうしたら患者さんやご家族が安心して満足できるかを考えるためのサインなんですね。

病院で7割以上の人がまだまだ亡くなる時代で、家で療養したり家で看取るっていうのはまだまだハードルが高くて、いろんな不安はあるけども、みんながこんなに手厚くみてくれるんだったら頑張って家でみようかなと思ってもらえるようにしたいというサインですね。

在宅療養で最初に大切なことは、不安を取り除くこと。そして療養期に大切なことは、安心できること。そしてゴールの看取りの時に大切なのは、納得できること。亡くなっても納得できるというのは、これだけみんなでサポートしてくれて、安心して家で過ごすことができて、やりたいこともできて、亡くなってつらいけれども、でもこれが最善だと思える、これでよかったと思える選択ができたと思ってもらえることが大事だと思うんですね。そのために看取り期のこのTTC、そしてどれくらい安心できるかを考える訪問頻度を意識していく、やりたいことをしっかり支援していくということは、サービスを行う人にとって大切なことであり、その大切な概念を表すのがこのTTCという言葉だと思っています。